夜店の数学
今は縁日というのがめっきり減った。辞書には、ある神仏に特定の由緒ある日、とある。この日に参詣すれば、ご利益があると信じられている。だから縁日なのだ。毎月四日はお地蔵さま、五日は水天宮、十七日は観音さま、二十八日はお不動さま。そのほかにも、干支(エト)に因んで申の日とか、酉の日のおとり様、浅草では植木市、羽子板市、ほうずき市、朝顔市などの市も立つわけで、これらも縁日と呼んでもいいだろう。とにかく沢山あるわけだが、とりわけ神仏に関係なくとも、戦後の銀座などは、銀座四丁目を中心に縁日の屋台が軒を並べていた。MPの腕章をつけたアメリカ兵が、交差点の真ん中で交通整理をしていた頃である。
わたしが小学生のときの話だが、浅草では毘沙門さまの縁日が毎月立った。大層な賑わいで、必ず行った。それは一つの目的があったからだ。詰襟をした学生が黒板を拡げ、数学を教えるのである。一時間でも二時間でも、私は立って見ている。僕たち、この計算が出来るかな?一人一人に、君は出来るか?と聞く。同じ数を二つ掛けると幾つになるかな、ある方法を使うと、早く計算することが出来るのだよ。それはこの冊子に書いてあるよ。いくらだか忘れたが、それを売るのである。私はそのガリ版刷りの本が欲しかった。おばあちゃんに小遣いを貰って買ったことを覚えている。
ではその中から一例を。
一桁目の数が足して10になり、二桁目の数が同じ場合の掛け算。
25×25、46×44、87×83
などは、一桁の数字はそのまま掛け、二桁目の数字はどちらかの数を一つ余計(2なら3)にして掛ける。
25×25の場合、5×5=25、2×2を2×3にして6、答えは625である。
同様に、46×44=2024、87×83=7221
また逆に、一桁目の数が同じ、二桁目の数が足して10になる場合。
48×68、84×24、36×76、
などは、一桁目は其のまま掛け、二桁目も其のまま掛けるが、さらに一桁目の数を足す。
48×68なら、8×8=64、4×6=24、24+8=32、答えは3264。
84×24=2016、36×76=2736
まだまだいろいろあるので、興味のある方には個人的にお教えしましょう。
今回は義太夫に関するお話がなかったので、せめてこんなのを覚えてください。
竹本義太夫さんが義太夫節を考案したのは、貞享元年(1684)です。イロハヨイと覚えましょう。
今年は2005年ですから、2005-1684=321 もう321年も前のことです。
悪法と謂われた「生類哀れみの法」が発布されたのが、貞享二年と言われています。
<弥乃太夫>
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