酉の市
毎年11月の、暦で酉の日はおとり様。浅草の鷲神社(大鳥神社)の祭礼で、通称「お酉様」として、境内には所狭しと縁起物の熊手を売る「酉の市」が立つ。何軒の店屋が出ているのか、年々その数も増えて、賑わいは大変な物である。
近年東京各地にも酉の市は立つが、浅草のおとり様は全く群を抜いている。今年は二の酉、11月に酉の日が二回あるのでそう呼ばれている。よく三の酉の年は火事が多いと昔から言われていた。何でかと思うが、解らない。
今年の一の酉は11月9日。天気もよく暖かかったが、今と違って昔は寒かった。10月のべったら市しかり、お会式しかり。11月になっておとり様の時にはもう冬が近いとあって、マントの襟を立てたり、防寒具に身を包んでいる人をよく見た。母や祖母が、(もうおとり様だもの、寒いネ、)とよく話していた。毎年のことなので、かき込み(熊手)を受ける。店屋さんや、水商売、芸能人など様々な業種のひとのお詣りが多く、熊手を買っては、店の繁盛に従って翌年には更に大きい物に変えてゆくと聞いている。
鷲神社辺は、樋口一葉に縁がある竜泉寺近くでもある。今年新五千円札のお陰もあり、一葉記念館も新しくなったので、多くの若い人に人気があるようだ。そして又、有名な吉原遊郭の入り口でもあるので、昔からおとり様にかこつけて遊びに行く若者も多かった。とくに吉原もこの日ばかりは、女性でも家族連れでも大々的に向かい入れてくれたようだ。江戸時代からこの日の夜は、特に遊郭が繁盛した。ところが反面「酉の市の売れ残り」という言葉もある。おかめの面のついた熊手の売れ残りに掛けて、醜い女を指すのか(と思うが…)
義太夫で酉の市に因んだものを考えたが、ちょっと分からない。大阪の「十日戎」の市なら、上方唄にもあり、「港町」の義太夫にも取り込まれているが、義太夫はやはり発祥が上方だからか、酉の市は見つからない。
今年平成十七年は酉年で、十二年に一度の酉の年の酉の月であるから、おとり様にお詣りすることは特別に意義深いかも知れない。
ところで、わかりますか?平成十七年、十一月、九日、午後六時頃が、「酉の年、月、日、刻」です。
<弥乃太夫>
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